朝礼訓辞

平成30年4月 朝礼訓辞

 「冷や飯、風呂は最後、30年耐えて、夫の死後離婚」
 何気なく見ていた携帯電話のニュース番組に流れました。
この夫婦に、どんな事があったのか、どんな事情があったのか知る由もありませんが、
何となく侘びしくて、悲しくて、切ない気持ちに駆られました。

 日本の明治、大正、昭和の初期の時代ならいざ知らず、現代の日本において、今も尚、
このような人間模様が生きているものか、やり切れない気持ちになりました。
 離婚を何回も考えたでしょう、今か今かと待っていたにも拘わらず、
とうとう最後までチャンスは訪れなかったのでしょう。
いじめられ耐えられない日もあったでしょう。
大酒飲みで夜遅くまで付き合わさせられた事もあったでしょう。
子供の教育のことで、意見が合わず自分の意見など、全く通らなかったのかも知れません。
私の想像は、何も当たってないかも知れません。
 しかし、この女性は耐えて30年の重荷を背負ったまま、それをポイッと投げ棄て、
ここできっぱり縁を切り、新しい人生を踏み出そうと決心されたのでしょう。

 曽野綾子という女流作家がおられます。
御主人は三浦朱門という同じ作家であり、文化庁長官や日本芸術院長を歴任された方ですが、
昨年9月91才で亡くなられました。
 在宅で介護にあたられた曽野さんは、その時86才でした。
若い頃、曽野さんが雑誌や新聞社の取材に出掛ける時には、
「天ぷらを揚げておくからね」と仰って、帰りを待っておられました。
 63年間の結婚生活では、夕食のあとは、いろいろ話をされ、お互いの小説のことなど
語り合い、精神的にも豊かな夫婦でした。

 御主人は、次第に年を重ね、身体的にも精神的にも、活動が衰えて行かれ、
最后には間質性肺炎を起され、呼吸困難のため意識が混濁し、眠るように穏やかに
旅立たれたそうです。
 御主人が亡くなられて1年が経った頃から、曽野さんは青い空に御主人の視線を感じたり、
声が聞こえて来ることがあるのですよ、と語られ、どんなにお互い尊敬し合い愛し合って
おられたのか、伺い知ることができます。

 夫婦は、仲良くして相手のことを思いやって、その生涯を送らなければならないのです。

 4月の入り、新年度を迎えました。
今月も新年度も皆さんと仲良く楽しく仕事に励んで参りましょう。
4月より入職された方、体調に気を付け、一日も早く仕事に慣れて下さい。
何卒よろしくお願いします。

  文芸春秋 4月号より

医療法人純青会 せいざん病院
理事長  田上 容正

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