朝礼訓辞

令和2年6月 朝礼訓辞

 今から約500年前、14世紀にヨーロッパを襲ったペスト(黒死病)は、世界の人口の3人に1人、約3500万人の生命を奪ったと云われます。
 日本では、1889年江戸時代にはじめてペストが流行して45人が死亡、その8年後には320人の死者を見ました。日本での最後の流行は、約100年前の1922年のことです。第一次スペイン風邪の頃です。
 近年は外国でも流行を見ませんが、この地球上からペストが消滅したわけではないと云われます。

 新型コロナ感染症は、日本では少しは減少して来ているようですが、アメリカや南アメリカのブラジル、更には、アフリカ大陸で猛威をふるい、これから先、どのように世界に拡散して行くかは想像できません。
 早くワクチンが開発され、薬が発見されるまでは、決して予断は許されません。

 フランスにアルベール・カミュという作家がいます。「異邦人」という小説を書き、44歳の時、ノーベル文学賞を受賞しました。
 彼の作品に「ペスト」という小説があります。
主人公はベルナール・リウーという医師です。或る朝リウーが往診に出ようと階段を下りようとした時、一匹のネズミが死んでいるのを見かけました。同じ日の夕方、玄関で大きなネズミがよろよろしているのを見つけました。ネズミは小さな声をたてながら、きりきり舞をして、半ば開いた口から血を吐いて倒れました。翌日往診に行くと、どこもネズミの話でもちきりでした。10日後には8000匹のネズミが死んでいるのが見つかりますが、同じ頃、原因不明の熱病が急増し、1日に約30人の人が次々に死んで行きました。
 原因は、ペスト菌に犯されたネズミに寄生しているノミが人間にペスト菌を感染させたことが判りました。

 リウーという医師の住んでいた約20万人のフランスの街では、政府の命令により直ちに市の閉鎖が行われました。今回の新型コロナの時に行われた市の封鎖、すなわちロックダウンです。
 ロックダウンが行われて3週目に302名の死者が出たことが報道されています。
 ペストの死亡率は75%と云われました。其の後毎週700名にのぼる人々の死亡があり、ネズミからペスト菌を受け継いだノミをばらまくかも知れないということで、犬や猫が殺されてしまいました。
 次第にペストは街全体をおおいつくし、もはや個人の運命というものは存在せず、ただペストという集団的な史実があるばかりでした。
 死体を納めた棺が不足し、墓地もなくなり、穴がほられ、男も女もごっちゃまぜに埋められ、その上に石灰がたっぷりと撒かれました。

 4月に始まったペストは次の年の2月頃終息したようです。

 今回のコロナもそうですが、100年に1度は「疫病」と云われる感染症が地球上にははびこるようですが、「ペスト」の作者カミュはこのような時、人間が良心を唯一のよりどころとして、悪や不条理に対し如何にして戦うというのか、カミュの文学の一貫したテーマであると云われています。

 コロナに対する緊急事態宣言は、6月1日に解除になりましたが、第2波、第3波があるかも知れないと有識者たちが警告しています。
 私達も、自分を守り、患者さんを守るためにはこれからも清潔ということに認識を新たにしなければならないと思います。

 梅雨に入りました。体調に気を付け、今月も一緒に頑張りましょう。

医療法人純青会 せいざん病院
理事長  田上 容正

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