朝礼訓辞

平成30年5月 朝礼訓辞

 福岡県田川市にTFG(田川ふれ愛義塾)という更生保護施設があるそうです。
 理事長は、41才になられる工藤良という人で、今年で開設10年目になります。
小学校2年生の時、両親が離婚し、母は夜、スナックで働きながら2才年下の弟を育てて呉れたそうです。
 夜は、自分で弟を守らねばならず、なかなか眠れませんでした。
しかも、体が小さくて学校でいじめを受けていました。
ある時、学校でいじめのリーダー的存在の子供を武器で叩いてしまってから、天地が逆転し自分がクラスのリーダーになりました。
 次の日から、やり放題大暴れ、ストレスを発散します。中学2年生の時、「極連会」という暴走族に入り、高校には行かず、仕事は長続きせず、窃盗や恐喝を繰り返し、18才で暴走族の総長になります。19才で、暴走族を引退し、暴力団に入り、覚醒剤をおぼえ、それを転売して、かなりのお金を稼ぐようになりました。20才で結婚し、子供が出来て少しは落ち着きましたが、再び覚醒剤に手を出し、妻とは別居、とうとう23才の時、覚醒剤使用の現行犯で逮捕されてしまいました。
 留置所に入ってすぐに罪の重さを自覚し、反省という感情が生まれて来たそうです。
ある時、留置場の小さな窓から、バアーッと眩い光が差込んで来て、声が聞こえて来ました。
「あんたが、眞面目になったとしても、あんたが道をつけた人達は被害者として残って行くんや」
 自分が更生しようとしている間にも、自分が悪さを教え、暴力団と繋いだ仲間は悪の道を進み続けている、ということを教えられたのです。
 今まで、まともに仏壇に手を合わせることのない人間でしたが、正座して光に合掌し「もう一度だけ、チャンスが与えられるのであれば、自分だけでなく、自分が悪の道に引き込んだ仲間を何年かかっても、元のレールに戻します」と誓いました。
 それから、浄土眞宗のお寺にこもり、座禅を組み、修業に励みました。
そうしているうちに、ボランティアというアイデアが浮かび、昔の暴力団や暴走族の仲間を1人1人口説き、納得させ、平成14年にはボランティア団体「GOKURENKAI」を結成し、平成20年には、NPO法人更生保護施設を設立し、多くの子供を救って、今も活躍しておられるのです。

 どん底の中で、自分で掴んだ希望の光を見つめながら、生きて居られる工藤良の生き方は私達に「人を助けなさい」という、人生の根本原理を教えて呉れています。

 私達は、どんな苦しいことがあっても、悲しいことがあっても眞面目に生きていさえすれば、必ず明るい希望に満ちた日が来ることを信じて「病める人に尽しなさい」と心に誓いながら、頑張らなくてはならないと思います。

 梅雨に入ります。暑い夏も、もうすぐそこです。
体調に気を付けて、今月も頑張りましょう。

  「致知」平成30年5月号より抜粋

医療法人純青会 せいざん病院
理事長  田上 容正

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