朝礼訓辞

平成28年8月 朝礼訓辞

 今から47年前、アメリカのヴァージニア州のある町で、ダウン症候群の子供が生まれました。

 その子は他にも小腸閉塞症も併存していて、手術をすれば治るかも知れなかったのですが、
両親は治療を拒否しました。

 栄養チューブで水のみが補給され、保育室の片隅で15日間生きて餓死しました。 この子供にとってその15日間はどんなに長い時間だったでしょう。よく見えない目で、 誰かがそばに寄って来ると激しく泣いて、助けを求めたでしょう。
しかしその声は、次第に小さくなり15日目にとうとう息絶えたのでした。

 更に34年前、同じアメリカのメイン州で重度の奇型を持ってる子供が生まれました。
 左半身全部が奇型で、左の目と耳がなく左手にも重度の障害があり、背骨にも異常が認められました。 また、気管と食道にも異常が認められました。口から入った食べ物は、食道から肺に
入ってしまう状態でした。両親は、手術に同意しませんでしたが、医師団は手術すべきだと主張し、 裁判にかけられ、如何なる人間にも生存権という基本的人権がある。として手術を受ける よう裁判所が命令しました。
 しかし、手術のあと暫く生きて亡くなりました。

 現在では、出生前診断によって、胎児に障害があるかどうか診断がつきます。妊娠を続けるか、中絶するかは、両親の判断にまかされています。

 しかし、全ての障害児を中絶しても障害児は次々と生まれて来ると云われています。 地球が誕生してから45億年、生命が誕生してから38億年になりますが、不思議な遺伝子の作用により、 健常者とともに障害者も必ず生まれて来るのです。この遺伝子により生きのびて来た人類は、健常者も障害者も、ある期間生き、そして死んで行きます。

 障害を持った人も一生懸命生きようとし、その家族も、一生懸命に支え、共に生きようと頑張っているのです。 その姿を見て私達は励まされ、自分の生きる糧としなければならないのです。

 私達、そしてその子供たち、そしてもっと先の子孫たちが「いつかいい日のために」今一生懸命頑張って行かねばならないのです。 病気や障害のある人達は私達にとって、かけがえのない存在なのです。

 暑い日が続いています。皆さん、体に気を付けて、この暑さを乗り切って参りましょう。 今月もよろしくお願いします。

山元加津子著「1/4の奇跡」より

医療法人純青会 せいざん病院
理事長  田上 容正

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