朝礼訓辞

平成27年4月 朝礼訓辞

 日本に全盲で弁護士の資格をもち、現在も活躍されておられる方が3名居られるそうです。
3番目に日本最難関の資格試験に合格された方は、現在38才、静岡県出身の大胡田誠さん
という方です。
 小学校6年生より、視力が落ち始め、12才で全盲になり、中学からは実家を離れ盲学校に
通いました。それまで出来ていたことが一気に全部出来なくなり、生活していくのが大変
でしたし、そういう自分を周囲の友達がどう見ているのかということが、やたら気になり、
外に出るのも嫌になる時期もありました。

 中学2年生の夏に、読書感想文を書くために図書館で本を探していたところ、
竹下義樹という弁護士の書いた「ぶつかって、ぶつかって」と云う本に出会います。
この著者の竹下さんこそ、全盲であり乍ら、日本で初めて司法試験に合格された弁護士の
自伝だったのです。
 運命の扉にガーンとぶつかってしまったような心境だったと述べて居られます。
それから猛烈に勉強し、慶応大学法学部に入学されます。

 入学してすぐの哲学の授業に出たら、教授から荷物を持って前に出て来るように
云われました。君が点字でノートを取る時はカタカタという音がうるさいという苦情が
出ているから、隅っこで授業を受けなさいと云われました。
 喜びに胸を膨らませた矢先だったので、本当に辛くて、思わず涙が出てきました。
ところが次の瞬間1人の学生が「席を移る必要はない」と大声を上げて呉れました。
「大胡田君も仲間なのだから、好きなところで授業を受けていい。うるさいと思うなら、
その人が席を移るべきだ」と云って呉れました。
 人の心の冷たさと、温かさに同時に触れたのです。周囲に理解されなかったり、
差別されたりすることがどれだけ辛いか。そういう時に差しのべられる手の温かさとともに、
誰か1人でも味方がいて呉れたら、どれほど勇気が湧いて来るのか、ということを実感された
そうです。

 大学4年の時から本格的に勉強を始めて、最終的に合格したのが29才、足掛け9年、
5回目の挑戦でした。今は総合法律事務に所属し、一般の民事事件や相続・離婚などの事件、
刑事事件などに従事するほか、障害者の人権問題などにも精力的に活動して居られます。
「絶望の中にいる人の希望の光になりたい」が人生のスローガンだそうです。

 勇気付けられる話ですが、私達もどんな人にも平等に、やさしく接し、患者さんを心から
労りましょう。

 新しい年度に入りましたが、今月も体調に気を付けながら一緒に働きましょう。
よろしくお願い申し上げます。

医療法人純青会 せいざん病院
理事長  田上 容正

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