朝礼訓辞

平成26年12月 朝礼訓辞

今年も最后の月となりましたが、私達の日本列島は、台風、豪雨、火山噴火など、色んな異常気象に襲われました。

中でも9月27日の、長野県と岐阜県の県境にある御嶽山の噴火が最も印象に残っています。
57名の人が死に、まだ行方不明の方が数名おられるようですが、噴火の時、火口付近に居た愛知県豊田市の小学校5年生で11才の長山 照利 あかりちゃんと、横浜市の26才だった会社員近江屋さんともう1人女性の併せて3人は、山吹付近の岩陰に避難しました。

吹き上げられた岩石が落ちた末、怪我で出血したり、夜になり寒くなり、さらに空腹の中で何時間かを過ごしている中に、 照利 あかり ちゃんが「寒い」と訴えた時、近江屋さんは、自分が持っていた緑色のジャケットを 照利 あかり ちゃんに着せてあげました。

捜索隊が入り、2人の死亡が確認された時、近江屋さんはTシャツに薄いジャンパーを着ているのみでした。近江屋さんのお父さんは「切迫した中で、息子が女の子を守ってあげようとした勇気をほめてあげたい。目の前に怪我をした子が居れば、誰でも同じことをすると思う。
2人とも生還できず本当に残念で、残念で、状況を知るほど悲しみは増します」と苦しい胸の内を明かして居られます。

この事実、状況は、生き残った女性の証言で確認され、 照利 あかり ちゃんの着ていたジャケットは近江屋さんの家族に返されたという報道が、日本中を 駆け廻りました。

他人の為に自分の命を捧げるほど尊い愛はない、と申しますが、何故、何も悪いことをしていない人間がこのような悲惨なめに遭うのでしょうか。
古今東西の宗教家、思想家、哲学者、文学者など多くの人達が、人間の苦しみ、死についての考察を重ねていますが、何の解答もなく、解決もされていません。

私達医療に携わっている者にとり、生きる道は、そして、為すべきことは苦しんでいる病人にやさしい言葉をかけてあげ、いたわりの心で寄り添ってあげること、ただそれだけだと私は考えます。

今年は皆さんに大変な御迷惑をお掛けしたことを心からお詫び申し上げます。
来年はきっと良い年になるよう、私も老体に鞭うち働きますので、皆様にも何卒御協力下さいますよう心からお願い申し上げます。

医療法人純青会 せいざん病院
理事長  田上 容正

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